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最近観た映画『悪魔の人形』(1936米),『イングロリアス・バスターズ』

最近…でもないけどここのところ観た映画は

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『フリークス』のトッド・ブラウニング監督『悪魔の人形』(1936米 The Devil-Doll/ Les poupees du diable)。
『フリークス』をかつてのアートシアター新宿「黙壷子フィルムアーカイブ」で鑑賞したときはしばらく悪夢にうなされたぁ〜。『ピンク・フラミンゴ』ノーカット版が併映というおまけ付きだったし。観なければよかった…と後悔することしきりであった。
でも本作は会社がしっかり監視したのか(?)グロさはかなり抑え目、お洒落な怪奇タッチに止まっててホッ。
共同経営者達のでっちあげの汚職で長年のムショ暮らした男が脱獄し、悪魔の人形を使って復しゅうする…という筋立て。マッド・サイエンティストの未亡人(髪型と演技があきらかに”フランケンシュタインの花嫁”のオマージュ)やら、人間の記憶を真っ白にして人形サイズに変換、殺人人形として思うがママに操るあたりが猟奇的で楽しいんだけど、話は途中で何故かホームドラマに。。。誤解から父を恨む娘と主人公の葛藤にシフトしてしまのであった。(これもプロデューサーの指図?)
が、そんな欠点を軽々と補ってたのは主人公を演じてるのが名優ライオネル・バリモアだから。玩具屋の老嬢に変装とか実に楽しそうに演じてる。『ノーブレス・オブリージュ』のアレックス・ギネスを思い出したけど、あっちの方がオマージュなのか??余計なはずの父娘エピソードも彼だからグッときた。

ライオネル、演技以外にも映画史に実に重大な功績を残している。
名優のジェームス・スチュアートが戦争経験の後、何もかも空しくなり俳優を辞めようかと思っていた時…
それを耳にしたライオネルが『人の心の琴線に触れるという事は素晴らしいと思いませんか?俳優というのは最も高貴な職業ですよ!』と思いとどまらせてくれたのであった。当時『素晴らしき哉人生!』で共演してたんですね。
(ピータ・ボグダノビッチ『ハリウッド・インプレッション』より)

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a0060003_901973.jpgそして、タランティノの新作『イングロリアス・バスターズ』(The Inglorious Bastards)。
実に快作であった。カンヌで最優秀男優賞を獲得したクリストフ・ヴァルツ演じる憎まれ役ナチの将校はもちろん、ブラピも悪くなかった。ダイアン・クルーガーは往年の女優の風格。ネタバレ厳禁なので一言でいえば、史実なんて(マイトで)ぶっばせ!!!!!ってカンジ。

…せっかくリバイバルされてたガス・ ヴァン・サント『マイ・プライベート・アイダホ』は見逃してしまった。。。
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by j-suguita | 2009-10-28 09:02 | 映画 | Comments(4)

「八月の光 - Lignt in August」  W.フォークナー

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ジョー・クリスマスはスーパー・ハードボイルドな男。
1930年代のアメリカ南部に於いて外見は白人、しかし何分の一か黒人の血が入っている…らしい…という宿命を背負い、悲惨な体験を経て成長した彼はクールな悪党になった。殺人を犯し逃避行の果て
「てめえの命を籠に入れた卵見てえに運び歩くのはうんざりしたぜ」
と、指名手配中の身で白昼の街を闊歩し逮捕される。

「自分を泣かせようとする」親切を嫌悪する彼は、養母の貯金箱を 目の前でぶちまけ
「俺は頼まなかったぜ。なぜってそうすりゃあ、あんたはこれお俺にくれちまうだろうからさ。俺はこれを勝手に取ったんだ。それを忘れるなよな」
と言い残して永遠に出ていく。ジョアナ・バーデンの手作り料理は壁にぶちまけるし縫われたボタンはナイフではがす。

何にも期待しない、求めない。一見ウルトラ・ドライにみえる彼は実は「情愛に束縛される」ことが怖い。そもそも彼が3年間半同棲した中年女、ジョアナ・バーデンを殺害したのは彼女が彼を支配しようとしたから。

ジョーは40代で処女だった彼女と強引に関係を持つ。その後ジョアナは欲情のとりことなるが、新教徒の彼女にはそんな関係を素直に謳歌する事など出来ない。信仰上、結婚外の性行為は淫行以外の何ものでもない。理由付けの必要な彼女は結婚を迫り、拒否されると無理心中を計るが、逆にジョーに殺される。

ジョーも迷いがなかったわけではない
どうしてだめなことがある?そうさ そうすればこれから一生が安楽におくれるんだぜ。二度とうろつきまわらないですむ。それにこんな有様なら、この女と結婚したほうがましじゃねえか 考えて『いや。もしここで降参したなら、俺は、自分のなりたい人間になろうとして生きてきたこの三十年を、むだにしちまう。』
そして「俺は明日出て行くさ」「いや日曜まで」「次の給料日まで」と、なかなか彼女の元を去らず、そして惨劇が訪れる。

貧しい田舎娘リーナ・グローブこそ何の制約ももたない女。
妊娠して捨てられたにもかかわらず「連絡の行き違い」と信じ込み、男を捜して臨月の身で、ジョーがジョアナを殺害したその日にこの街まで流れ着く。
レッド・ツェッペリンの「天国への階段」の”光るものはすべて金”と信じ込んだ女の様に愚直でパワフル。地味男バイロン・バンチは「八月の光」のような強烈なオーラに一目でとりこになる。そしてリーナはクリスマスがリンチ死するその日に男児を出産する。偶然にもクリスマスの祖母に介護されて。祖母は錯乱気味で、リーナの産んだ子と乳児期のクリスマスを混同する。この辺り「キリストの復活」という事がどうしても頭をかすめてしまう。(フォークナー自身は「ジョー・クリスマス=キリスト説」を否定してるそうだが)

この作品、同じフォークナーの「怒りと響き」に比較すると平易…といわれているが私には当初とっつきにくかった。「宗教」「人種」というのが日本人にはピンとこないモチーフだし。にもかかわらず、最後まで読まずにいられなかったのは、基本的には人類にとっての普遍的なテーマが描かれているからなのだろう。

まだまだこの大作を消化しきれないでいるので、(ハイタワー元牧師の存在とか、ジョーと祖母の30年ぶりの邂逅、再逃亡etc...)そのうち読み返して理解を深めたいと思う。
松岡正剛さんの「千夜千冊」大洋ボートさんのブログが随分と参考になった。

宝石のような素晴らしい文章の中でも、性の深淵にはまった二人を表した下記のくだりが特に印象深かった。
彼は、とどまって見まもりつづけた。二匹の動物が一つの肉体になってもがくのを — 落ちていく月の下の黒い水面で月光に光る二つの生物が相手を沈め溺らせて苦しめあうのを、見まもった。

八月の光 (新潮文庫)
ウィリアム・フォークナー
加島 祥造 訳
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by j-suguita | 2009-10-05 03:37 | | Comments(8)