最近の・・・dernierement・・・

動き、と静止そして投影

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先日、映画通のTさんとお話をしていたら、小津安二郎の「麦秋」('51)の話になった。
有名な、踏切のシーン ーもうすぐ嫁ぐ娘(原節子)を思い父が感慨に耽るシーンー はワタシの心にも深く残っている。でも、Tさんの解釈は違った。
「小津は単に、静止した人物と、動く電車の対比が撮りたかったんだな。映画っていうのは動きで成り立っているんだから、ローアングルだけで作品が撮れるわけがないんだ。」
・・・なるほど。。

あらためて「麦秋」でググってみたら、やはり面白い説を見つけた。
中国で戦死した原節子の兄が重要な「非」登場人物として存在してるが、(原節子がエリートサラリーマンとの縁談を断って、子持ちヤモメ男と結婚するのは、ヤモメが大好きだった亡兄の親友だったから。)この「非」登場人物には、小津の親友の、そして「亡兄」と同じく中国で戦病死した天才監督「山中貞雄」が投影されている、というもの。
なるほど、そういう見方もアリか。
フランス映画ばりに暗くシニカルに江戸末期の人間模様を描いた「人情紙風船」が山中、若干28歳の遺作。

やはりTさん説では「麦秋」のテーマは"喪失""戦争で失われたものへのレクイエム"。
そう考えると非常に辻褄があう。
イヤー、私はこの作品、”ひとつの完成された天国の提示”だと思ってたんだけど、(実年齢は別として)まだまだ若輩者かもしれないー。
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by j-suguita | 2007-05-11 07:28 | 映画 | Comments(16)
Commented by 小坊主 at 2007-05-12 09:24 x
忘却の霧の彼方の映画ですが、Tさん説は、採れません。
それより何より、麦秋がアーリーサマーでは、タイトルそのものが、ミスリーディング。
Commented by 管理人スギタ at 2007-05-12 23:15 x
なるほど、K'zさんにはK'zさん説が。人によって見方が違うのが楽しいとこですね。
>麦秋がアーリーサマーでは
あれ、歳時記では季語は夏、初夏の頃、麦を取り入れる季節のようですが? 師匠、見てるかしらん。。?

まー、邦画の欧米語訳はムズかしいですよねー。
秋刀魚の味 が英語で"An Autumn Afternoon"、仏題は”酒の味”ですもん。秋刀魚はフランスにないので。(ア!釈迦に説法ですね、スンマセン!)
”お茶漬けの味”は素直に”"The Flavour of Green Tea Over Rice”のようですが、冗長ですよねぇ。それにこれだと玄米茶みたいで。。
日本人としては"お茶の中のご飯の味"ですよね。
ひとつ、名意訳なのは隠居したジジイが年甲斐も無く、かつての愛人に入れ込む物語「小早川家の秋」。
仏題が「Dernier Caprice:最後の気まぐれ」で、これはグー。
Commented by クワ at 2007-05-13 05:25 x
『秋刀魚の味』の仏訳、いいと思うけれど。
サンマなんて欧米人は知らないし、第一その語感が解からない。
だから、お酒を飲むシーンも印象的な映画なんで、良い訳だと思います。

でも仏語の字幕でオカシイと思うのが時々ありますね。
Commented by yakimonoや at 2007-05-13 22:14 x
ブンガク知識の無い私には ナ~ンにもわから無いことばかりですが ただネ、ヤマトなでしこじゃないけど 和の 文化はいいと思いますよ。 やっぱし、明治、大正、昭和のあたりの日本が いいと思うけど。
Commented by 管理人スギタ at 2007-05-14 05:02 x
うん、い〜ですよね。
小津も、横浜で使いもしない舶来品を買うハイカラ好きな面と
江戸情緒の残る東京の下町を散策したり、、レトロ趣味な部分と
と良いものは何でも好きだったらしい。
東京もレトロタッチにデザインし直せば良いのにね。

ところで、このシーン、戦後たった6年後なのに、仕立ての良いシャツに上品なカーディガンを着たお父さんがちょっとそこまでカナリアの餌を買いに行く、、、というプロットです。
これ、昭和初期生まれの人に聞くと、当時の観客にとっては、夢のように超現実的だったらしい。
Commented by 花柄 at 2007-05-14 20:42 x
> 師匠、見てるかしらん。。?

見てますよ。
俳句では、6月ごろ(初夏)麦が色づき、まるで秋を思わせる風景から「麦秋(むぎあき)」あるいは(ばくしゅう)と言います。
麦は、たいていは秋に蒔きます。冬の初めに「麦踏み」と言う作業もあるのです。
それは冬に根が浮いてこないように、踏むのです。昔は人力でした。
「麦秋」も「麦秋」も「麦踏み」もミレーの絵のように、物悲しい風景です。
「麦秋」いいですね。

麦秋の俳句も師匠 作ってみましたよ。
<麦秋の女が髪を染めてみる>ふふふ。
あまり物悲しいとは言えないね。
Commented by 小坊主 at 2007-05-14 21:11 x
そこなんですよ。
麦秋のイメージは、収穫、終わり、死。
アーリーサマーは、ちょうど逆の語感。
Commented by 管理人スギタ at 2007-05-14 23:42 x
し、師匠!! 
弟子入りもまだなのに、ご教示ありがとうございます〜〜!

なるほど、「麦秋」は季節は初夏だけど、相反して淋しさが漂う、とうすごく複雑でムズかしい季語なのですね。

>麦秋の女
師匠のことじゃないですよね? 師匠はエイジレスだから。。

小坊主さま、
ナルホド、師匠が仰る様な、反対の含みがあるワケね。
六月頃=アーリーサマー、とは単純にいかないわけですね。
翻訳家の方々のご苦労が垣間見えた様な気がいたします〜。
The time of harvest (でもこれだと、初夏だけど淋しい、という相反するが出ませんねー。)
Harvest in Early Summerじゃ、あまりにも説明的。。
Summer of harvest とか?
う〜ん、仏語でさえ四苦八苦してるので、この辺でやめとこ。。
Commented by クワ at 2007-05-15 04:54 x
>まるで秋を思わせる風景から・・
なるほど ! 昔の人は凄いセンス持ってましたね。

>ミレーの絵のように、物悲しい風景です。
『落穂拾い』なんてよく考えればキビシイ光景なんですが、それを昇華させてるのがこの絵描きの素晴らしいところですね。
彼のスケッチも見事なものです。

Commented by 花柄 at 2007-05-15 09:52 x
クワさん 麦が黄金色になった景色は綺麗です。
お米は秋ですけれどね。
初夏なのに、緑の中の黄金色は、そこだけ秋と言う感じです。
私も「麦秋」は大好きです。
クワさんの絵もミレーを思わせる絵がいっぱいありますよ。
働く姿の絵などは、大衆の支持がありますね
Commented by クワ at 2007-05-15 21:42 x
花柄さん、なんという暖かい言葉を。。。有難うございますぅぅぅ (嬉し泣き)。
Commented by 花柄 at 2007-05-16 00:01 x
これこれ 泣かないで。。。
本当よ。
働く姿というのは絵になる風景だったのですね。
写真も そうなんですね。
花柄は大いに反省しておりまする。
Commented by 管理人スギタ at 2007-05-16 04:54 x
>働く姿というのは絵になる風景
そーですねー! ただ、、職種によるかも。。
macに向かってカチャカチャやってる姿はあまり絵にならなそう。。
Commented by クワ at 2007-05-17 21:20 x
>働く姿というのは絵になる風景・・
そうですね、その人の真実が現れます。
Commented by yakimonoや at 2007-05-28 22:09 x
日本の映画も 悪くない、人気が出てきたんだろう。 河瀬監督の受賞は いいニュースだ。 しかしはじめて見るネ。 いい感じの美貌だ。
Commented by j-suguita at 2007-05-29 03:15
彼女は、10年前にも「萠の朱雀」で初監督作品賞撮ってるんですよ。
しみじみした良い作品でしたけど、あんな地道な作品を撮り続けてるのは相当な意思力が必要でしょうねー。