東京の合唱(コーラス)
2006年 12月 08日
フランスでも小津安二郎は高く評価されてる。時々特集をやっていて、先月も何本か上映されてた。その内一本が日本で見逃した「東京の合唱(コーラス)」だったので今回は行かなければぁ!ってことで行ってきた。満足満足。
「がっしょう」ではなく「コーラス」なのも、今回タイトルで知った。いかにもモダン好みの小津らしい。岡田茉莉子さんの父君である岡田時彦という俳優さんのハンサムでモダンでユーモアセンスのあること! アメリカ映画狂で、洗練されたルビッチのファンだった小津らしいキャスティング。子役時代の高峰秀子さんの美少女ぶり、おしゃま振り、も楽しい。
話は、不況のまっただ中だってのに社長とケンカして会社をクビになる若い子持ちのサラリーマンの話。彼には、苦学して大学を出た、という経歴がある。職業安定所に行ってもそうそう仕事はない。道端で見てる乞食が、パリっとした背広姿の彼を見て「あんな立派な人でも仕事がないんだなぁ、、」といってシケモクひろってるのが、当時の空気を反映してリアル。困った彼は妻子には黙ってトンカツやのサンドイッチマンなんかをやってる。その姿を又、偶然にも妻子が都電から「あっ、お父さんだ!」とかいって見つけちゃうんだよね。
で、妻は涙ながらに「あんなことまでして!」と非難しますが、夫は夫で他に仕様が無い。で、結局夫婦でトンカツやを手伝うようになるが、、、、とあとは見てのお楽しみ。
奥サン役の八雲恵美子さん(改名して理恵子さんになったみたい)が、元売れっ子芸妓さんだっただけあって、日本人形のような美しさ、優雅さ。。。同じ小津の無声映画作品「浮草物語」では、気っぷのいい旅回りの姉御女優を演じてカッコ良かったけど、その時のチョッと不良っぽいカンジとはうって変わり、気質の奥サンらしいカジュアルな品格を出してた。
ところで、この作品教訓はなんだろう、って思い。。
ー「社長とケンカしてはいけない」
ー「社長とケンカしてもなんとかなるさ」
ー「社長とケンカしたきゃしてもいーけど、代償は払う事になる」
・・・って、これは観る人が判断しろ、ってことだろーな。
しかし、、、残念なのは小津の無声映画作品で現存していない作品が数多くある事。上記の「浮草物語」が幸いにも現存するのも、50年代に小津自身が同作品をリメークしたから。もう一度見てみたい、という事で焼き直しさせたものが残ったらしい。初期の作品ならともかく、キネマ旬報などで作品賞を総なめにした「また逢う日まで」'32(久我美子がチューするのとは別の作品)も、見られん。。。残った文献によると、家族が戦争によって離ればなれになることを描いて、間接的な、しかし力強い反戦映画になっているらしい。 (満州が建国され、五・一五事件がおき、ドイツでナチが第一党になった年にこんな作品を作っちゃう小津、やっぱり好きだ。。。) でも、外国のシネマテークの倉庫で幻の名作が発見されたりする事がタマにあるので、、、希望は捨てていません! 死ぬまでに、この作品を鑑賞するのが夢。
ア、関係ないけどこの映画街にやはり良い劇場があったけど、前を通ったら閉鎖してておそらく別の業種に変わる工事中だった。。。時代はDVDなんだなぁー。
(2007年3月26日付記:↑上のようなこと書きましたが、大勘違いでした。すんません。うれしいことに当映画館は改装され大変快適な映画館に模様替されたようです。今度いったらレポートさせていただきます。)
今、流行っていない映画館で、昔の映画を上映して、老人たちに喜ばれている、映画館が北海道でもあるらしいのです。昔、見たいと思っていたのが、上映されていたら観てみたいものです。
尚、久我良子は「美子」かも知れません。
あ、そうですね。気品がある女優さんでしたが、華族なんですよね。
昔の映画はお年寄りだけではなく若い人にも観てもらいたいですね。
映画好きのフランス人は小津、黒澤、溝口、成瀬などはよく知っています。今村や大島も人気がありますが、やはり若い人は北野あたりでしょうか。
クワに先を越されましたが、フランスでは新旧問わず良い作品を一年中上映しています。フランス人の良いところは、彼らは自分たちが世界一、と信じて疑いませんが「じゃ、世界2番はダレ?」と常に好奇心もってるところ。
久我良子は「美子」でしたね! 本当に気品あるステキな女優さんです。
上ではDVDなんちゃら、なんて書きましたが、私自身も結構DVD借りてます、そーいえば(笑)
私が子供の頃はお昼にハリウッドの名作を放映してて、それを何となく見てて映画ファンになってしましました。吹き替え版で、おまけにズタズタに縮小されてはいましたが。
若い頃、服飾関係の仕事をしていた母が一緒に見ながら「スゴイ!あのドレスはどんなに動いても襟ぐりが体にくっついてる!」とか「あの女の人、泣きながら運転してるのに交通事故にならないよ。。。アメリカは道路が広いんだねぇ。」とか「あら、悪者が底なし沼に落ちたのに、主人公は助けないよ。外人はドライだねぇ」とか本筋に関係ないことで一々コメントしてたのも覚えてたりします。
>その頃はダンボールはなかったハズ
おぉ、スルドイ指摘。
時代考証、大事ですよね。キチンと時代考証された作品は「深み」が違うのでは? 私自身は歴史オンチですが、そういう制作側の姿勢って雰囲気、心意気として観客に伝わると思います。
重いはずなのに重量感が無かったり、軽々と持たれたりすると、スタッフや役者のプロ意識を、疑ってしまいます。
さ、さんぜんごやくえんーーー!!???
た、高っい。こっちでは1500円ですよ。(それも、円異常安のレートで換算して、です。)午前中は800円で見られます。
そういえば、里帰り時に映画見て支払う時に「おぉぉぉぉぉぉぉ」と思った記憶が10年くらい前にあります。それ以来、里帰り時もDVD専門。
3,500円だったら、私、歌舞伎に行きますね。歌舞伎だったらつまらない、わからない、にかかわらず数百年の歴史とか、もっと単純な話、国宝級の着物を鑑賞するだけで元がとれちゃいますよ。
>下手すれば、一時間前から並んで。
もう、観る力残りませんね。。。日本なら良いでしょうがフランスの場合は割り込みする輩がいるのでそれを見張るだけで消耗しちゃいます。
ア、で、件の妻殺しの映画は、夫が思い直し都会の愛人と別れ、素朴な妻と新たに出直すというおハナシです。
無声映画なので、監督はことさら俳優の動き、に力を入れたのでしょうね。このムルナウという監督は、映画にセリフは要らない、といのが持論だったそうですから。「サンライズ」という作品です。
まして、こういう心模様を描くのであれば。
事実、殺されかかる妻を演じたジャネット・ゲイナーは、同作品でアカデミー主演女優賞を受賞しました。
・・・個人的には彼女がやった真面目な若妻のキャラって、優等生的でいかにもピューリタン好み、ってカンジであんまり好きじゃないけど。
こいつは、やっぱり、クリスマス?
ただ、映画のポスターは よく覗くンですよ。 見てると楽しい。 大きな看板で 筆書きした映画広告も楽しい。 これはタダで見える。
母親が「石の花」というロシア映画を見に連れて行ってくれたことを覚えています。
映画はテレビで見るくらいで映画館へ行ったこと10本の指で足りるかも。
どんなド田舎に住んでいたんだという話になりますが、家庭環境が大きいですね。
若い頃はたしかに、店員さんが付きっきりになってくれました。
今は、見張られてる、ってカンジ。。。
よこさん、
私たちの頃は、親が連れてってくれる映画、っていえばディズニーでした。金髪碧眼の美女にあこがれてしまったりしたものです。
今思うと、ディズニーは西洋的価値観を世界にバラまくのに貢献した???
小津に話を戻すと、彼が戦時中にシンガポールで「白雪姫」を観て「日本は負ける!」と確信したそうです。たかが子供映画にあれだけの完成度、つまり資本と人力を投入できる国、ということで。淀川さんも同じような事言ってたなー。
小津がビックラこいたのも納得ですね、あの完成度は。