最近見た映画 2016 - 秋冬

イタリア映画「ミラノの奇蹟 Miracolo a Milano」(伊 1951) ビットリオ・デ・シ-カ監督
カンヌで大賞を取った名作…とは聞いていが、人々が箒に乗って空に舞い上がる…というシーンの抜粋を見て「つまんないお人よし映画…」という印象で鑑賞する気にならなかった。
が、たまたま週末することもないし、映画クーポンが余ってるし、で何となく見に行ったら….これが大変な名作!!

お人好しなおとぎ話..と言えばそうだけど、しかし、その中に人間のセコさ、醜さがキッチリ描かれている。それもウエメで糾弾するのではなく、自分もちょっとドキっとするような、わが身を振りかえらざるを得ないようなヒトの弱さがユーモアたっぷりで描かれている。

ロロッタ婆さんのキャベツ畑で生まれたトト、その後ロロッタ婆さんから基本の教養を教わりながら成長するが、婆さんが亡くなり6歳で孤児に。その後孤児院に入るも、18歳で外に出される。街を歩いては見知らぬ人に「ボンジョルノ(こんにちわだけど直訳すると、良い日)!」と声をかけ胡散臭がられる。

その夜自分のカバンを盗んだ乞食と友達になり、彼のテントに泊まる。翌日、大嵐でテント村のすべては壊滅状態。そこでトトが音頭を取り廃材を集めて、集落を作る。貧民街とはいえ立派な仕上がりで、その他の家のない人たちも住まわせるほどの出来となる。中心人物となったトトは、ここでも人々に「ボンジョルノ!」と声をかけ、自分がロロッタ婆さんにしてもらったように、子供達に 読み書き、暗算を教える。いつも暗くネガティブな青年が鉄道自殺しようとするのを救出、「人生は美しい!La vita é bella ! ラ~ララッラ~。ほら君も歌って!」「…ラララ…」「その調子!」。思いを寄せる娘にも出会う。

が…完成と同時にこの土地から石油が出る。(おとぎ話なのでつっこみ無用) 土地の所有者である資本家モッビは、さっそく土地の没収を画策する。そこに天国から、ロロッタ婆さんが願いをかなえる白い鳩をつれてやってきた。貧民街の仲間たちは、当初は「パンを…ミシンを…」とささやかな願いを叶えてもらうが、だんだん欲望がエスカレートし「毛皮を!大金を!」と押しかける。その鳩を使ってトトはなんとかモッピの私営警察と対峙するが、奇蹟の鳩は追ってきた天使たちに取り上げられる。

(以下ネタバレなので注意)

監獄馬車に詰め込まれるトトと恋人と仲間たち。が、ここでまたロロッタ婆さんが鳩を連れてやってきて、清掃員の箒が魔法の箒に化ける。
その箒でトトと仲間たちは「ボンジョルノ」が言葉通り「良い日!素敵な日!」を意味する国に飛んで行く。

…と、ここまで聞いたら「え" ただの古いお人よし映画じゃね??」という印象だろうが、貧民集落の人々の人間臭さ、ハンパない。トトが入居者希望者の登録の為に列を作らせると、ほんの少し他人より身なりが良く、召使(トトが心を寄せる娘)を連れているだけで「私はあいつらとは違う!」と高飛車な元貴族、2階を作り足して皆より高いところにいる自分が優れている…と勘違いする男、トトが白い鳩を手にすると「食べ物を!ミシンを!毛皮のコートを!金を!」「あいつが10000リラなら俺には20000リラを!!」と欲望に止めどもないニンゲンたち。その浅ましさがリアルさであった。

リアルといえば…ビットリオ・デ・シ-カは「自転車泥棒」で世界に名を馳せたネオレアリズモの旗手。その彼が多重撮影を駆使したファンタジー映画を撮ったところが興味深い。

鳩に願い事をするシーン、惹かれあう黒人男と白人女は、それぞれ相手と同じ色の肌の色を頼んで、 黒人女と白人男に…と 0ヘンリの賢者の贈り物と同じ結果になってしまう。。トト、気を利かせて「あ、さっき女の子を黒人にしたから、君はそのままで良いよ!」と言えばよいのに、まー天使なトトに下世話な機転は望めないが。しかし1951年に違う人種同士の恋を描いた先見性は驚き。



その後デシーカ監督は、ネオリアリズムの枠にとどまらず50年代にハリウッドで「終着駅」、戦火を逃れ疎開するが悲惨な運命に見舞われる母と娘を描いた「ふたりの女 」、60年代にヒューマン・コメディー「昨日・今日・明日」、70年代大ヒットした「ひまわり」などの佳作を撮る。特に71年には「悲しみの青春 」 (1971)でアカデミー外国映画賞を受賞。充実した映画作家活動の後に74年に永眠。多くの作品が戦争の悲劇を主題にしている。

こっちのフランス語の予告編は、完全にネタを割ってしまっているのだが、まー当時はこんなもんだったんだろ ^^;



「ドライヤ-のヴァンパイア Vampyr」(デンマーク 1932)カール・テオドア・ドライヤー監督

一般的には「吸血鬼」なんだけど、今の感覚だと「ヴァンパイア」の方がしっくり来る。ヴァンパイアはおばちゃんで、いわゆるオールバックに黒マントの牙の男が娘の首に..というシーンは一切出てこないので。
若いころ観て魅了され、数十年振りに再鑑賞。やはり素晴らしい。。幻想的な話なのに、妙な現実感があるのが逆に神秘的。吸血鬼の物語だが昼のシーンが多く、もしや、夜のシーンの昼間撮影の技術がまだ未熟だっただけかも…だが、どちらにしても、それが素晴らしい。

やはり白眉はヴァンパイアの呪いの下にある娘を助けようと献血し、朦朧とした青年が見る白昼夢。棺を覗くと息絶えた自分自身がいる。走る馬車に乗せられた棺の窓から見える雲や木々、街並みの幽玄さ。影を追っていくと、影の持ち主の実物にたどり着く幻想。

a0060003_07150495.pngラスト近く、ヴァンパイアが杭を打ち込まれると、呪いにかけられ高熱にあえいでいた娘がスクっと起き上がり「私の魂は自由…」と宣言する。
これは、形は違えど何らかの「 ヴァンパイア」に侵された人が、その呪いに杭を打つことで魂が解放される…という隠喩を感じた。



「俺はダニエル・ブレイク I, Daniel Blake」(英 2015)
ケンローチの新作!「ミラノの奇蹟」同様、カンヌで大賞(本作はパルムドール。51年当時はグランプリとパルムドールに分かれていなかった)を受賞。

58歳の大工、ダニエル・ブレイクは心臓病の発作で倒れ主治医からはドクターストップがかかる。が複雑に絡み合った社会保障システムの壁で疾病手当を受けることが出来ない。社会保障事務所は「では失業手当を申請してください」というが、それには就職活動が義務。働けないのに…カフカ並みのパラドックサルな世界。

すべての申請は、彼が大の苦手のコンピュ-タ-でしなければならない。そうこうしているうちに、2人の子供をかかえたシングルマザ-と出会い、彼女の苦労を聞くうちに同様な社会保障システムの歪みを知る。彼女の子育てや住居を助けるうちに友情がはぐくまれる。

彼はついに持ち金が尽き、すべてを売り払い、何もない部屋で毛布にくるまれて生活するようになり、シングルマザ-も売春にまで追い込まれる。そして、いつもの社会保障事務所での面談にウンザリしたダニエルは、事務所から出ると、事務所の建物の壁にスプレーペンキで「俺はダニエル・ブレイク58歳。俺に疾病手当申請のためのアポイントを取らせろ。そして、電話窓口のお待たせ中のファッキンな音楽を変えろ」と書き座り込む。待ちゆく人たちの拍手喝采!!

もちろん、警察に行くことになるが。そして….こんな悲惨な状況もケンちゃんはユ-モアを上手くちりばめて描く。


秋冬に観て印象深かった作品はこの辺りか。8月に亡くなったジーン・ワイルダー主演の『大陸横断超特急』もかなり楽しかったが、寝不足の翌日に行ったので1/3寝てしまった ^^;
機会があったら体調を整えて再観したい。



[PR]
by j-suguita | 2016-12-25 02:23 | 映画 | Comments(0)

日々の生活の中で、ふと思ったこと、感じたこと。


by hoooooh
カレンダー
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31