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パリ日本文化会館「三隅研次・加藤泰 監督特集」

日本映画は小津、成瀬などの50年代の巨匠が大好きで60年代以降のヤクザ映画などは邪道…と思い込んでいた私だったが。
この度、邪道ってステキ!と思うフェスティバルが。
パリ日本文化会館で「座頭市シリ-ズ」の三隅研次監督、「緋牡丹博徒」の加藤泰監督の特集が組まれ約20本が上映された。

座頭市シリーズ第一作「座頭市物語」これは私の観た日本映画ベスト10に入る完璧な名作…



目を見張るカメラワ-ク、カット割。何より素晴らしかったのは、敵役の天地茂。
ここでは憎々しい敵役ではなく、座頭市とはお互いにレスペクトしあい友情をはぐくくみながらもラストではお決まりの決闘をする。
この男同士の友情だが…友情というより…あの行動はまるで恋だね!
ゆっくり飲もうとさそう天地、そこへ親分からの連絡が。とてもザンネンそうに「また会えるかな?」「へぇ」「また、ちょくちょく会えるかな?」このやりとりの熱く濃いこと。そしてラスト、倒れる天地を支える市の固い抱擁…これがこの男臭い名作に、悩ましさを加味してるぜ!

「緋牡丹博徒・花札勝負」「緋牡丹博徒・お竜参上」



ともかく藤純子さんの、完璧な美しさにキョウガク。。。まさに浮世絵から出てきたような美女が気品とエレガンスを保ったまま、啖呵、死闘をする格好良さ。立ち回りのシャ-プさも見事!
両作それぞれ、高倉健、菅原文太が助演している。3作目では立ち回りシーンで健さんが「お竜さん、あっしから離れるんじゃありやせんぜ」と、喧嘩は男の仕事…なノリで主役をくっちゃってる感もあるが。でもこのシリーズが安定した人気となった6作目での菅原文太は、むしろ花を添えていてる存在で、60年代のウ-マンリブパワ-を感じる。
ラストの死闘で少しずつ髪と着付けが乱れて行く様は壮絶な色っぽさ。ひとつザンネンなのは3作目も6作目も、緋牡丹お竜がモロ肌脱いで背中の刺青を魅せて啖呵を切るシーンがないこと。wikiでみたら藤純子さんは肌を見せることにとっても抵抗があったんだそうな。

その他「眠狂四郎」シリーズでのちょっと毛色の変わった「眠狂四郎、無頼剣」
こちらのブログでよく解説してくれてるので詳しいことは省くが(ネタバレあり)
これも天地茂が助演、市川雷蔵をくってしまう程の存在感で、当初は犯罪者ながらも正義感に燃えた人物でつい応援したくなるのだが、実は狂ったテロリストなのであった。赤軍テロなどで揺れていた当時の世情を思い出した。「敵討ち」などに身をやつしているといつか方向性狂っちゃうよ、というメッセ-ジか? そのテロリストの天地が最後の最後に見せる、狂ってない部分…感性豊かな優しさ…が復讐のむなしさを浮き彫りにして、また良かった。

そして、異作中の異作「男の顔は履歴書」
戦後焼け跡の闇マーケット住人と三国人マフィアの死闘の話なのだが、こんな目茶目茶で面白い作品は観たことないぜ!もう少しシナリオを整理すればサブカルの異作ではなく不朽の名作になれただろうが、そんな型にはめるのももったいない感もあり、この混沌さが良いのかも。主演の安藤昇は本物の893だったそうだ。まだ若い菅原文太が、「レザボア・ドッグ」のミスター・ブロンド並みの狂いっぷりを見せてくれる。

その他、座等市シリ-ズの第六作「座頭市 血笑旅」。差し込みをおこした子供連れの女性に、市が親切心から籠を譲ってやるが女性は市と勘違いされ殺されてしまう。市は責任感から生き残った赤ん坊を連れて旅をするがだんだん情が移り…という設定。すでに定番となったシリ-ズ中ちょっと毛色の違ったものを作ってみた、という感じで楽しかった。

それにしてもこの特集、フランス人の若い男の子がSNSで紹介してくれなかったら見逃すところだった!「三隅研二はとってもファンだけど加藤泰は知らなかった。知ってる?」という問いに、日本文化のフランスでの浸透を感じたのであった。

私がフランスに着いた1990年当時は、ごく一部のインテリ、裕福で日本工芸に親しんでる人以外は、「日本ってどこ?」くらいの認識だったけど、こうやってサブカル的なもへの認識も着実に増えているようで、日仏友好上、大変けっこう!
by j-suguita | 2012-02-24 06:57 | 映画 | Comments(0)

日々の生活の中で、ふと思ったこと、感じたこと。


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