ジョン・フォード監督「タバコ・ロード」 (米 1941) John Ford : Tobacco Road
2011年 05月 04日
コールドウェル原作の本作は「怒り...」と違い、不毛となった南部の土地に固執し前進しようともしない怠惰な老農夫とそのプア・ホワイト家族が主人公。
軽度の知的障害のある10代の息子が、財産持ちの中年女性と結婚するや彼らの車の転売を図る(もちろん失敗)...12才の娘を結納品目当てに嫁に出す... その婿が、家出した妻の行方を探しにやって来ると、家族中で羽交締めにし農作物を奪う...とても自己投影出来るような人物ではない。(本当は「怒り...」のけなげな主人公たちよりこういう人の方が我々に近いんだけど)ラストに少し光が射すが、長い目で見たら彼らの前途は尻つぼみなのは明白。
フォードはいつものように南部の不毛の農地さえ詩情豊かに美しく撮っている。もとが舞台劇なのでオーバーな演技、悲惨すぎるプロットを緩和するためのコミカルさが滑って見えた点はイマイチだったけど、全体的には拡張高い人間ドラマだった。尚、ほぼノーメイクで泥だらけ、裸足の娘を演じるのは若き日のジーン・ティアニー。色仕掛けで奪った大根にかぶりつく演技など、役者魂のある女優さんだったんだなーとあらためて感服。
しかし、こんな今だから思ったが、主人公の様な土地への執着...言い換えれば尊敬と愛着はもちろん、私は生まれて此の方「土」というものについて考えたことすらない。大地から採れたものをいただいて生きてるというのに。もちろん、人それぞれメチエというものがあるが、我々は土への尊敬、感謝ををあまりにもないがしろにしてたかも。
...で、またそこかよ! と言われそうだけど、もし我々が上記のじいさんのような気持ちを一ペタでも持っていたら... 今回のような「すぐに健康に問題のない」程度の事故でさえ周囲数十キロの土を汚染する原発の建設を許しただろうか?そういう意味でも本作にはいろいろと考えさえられたのでした。
* 付記
福島県で3月24日朝、野菜農家の男性(64)が自ら命を絶った。
男性は30年以上前から有機栽培にこだわり、土壌改良を重ね種のまき方などを工夫し、この地域では育てられなかった高品質の種類の生産にも成功。農協でも人気が高く、地元の小学校の給食に使うキャベツも一手に引き受けていた。「子どもたちが食べるものなのだから、気をつけて作らないと」。そう言って安全な野菜づくりを誇りにしていたという。
ご冥福をお祈りするばかりです。
奴隷が連れて来られるずっと前から何世代に渡ってさげすまれてた…って点では同じだから。主の小作人、20世紀に入ってからはヨーロッパからの低所得な移民も含まれるようになったみたい。
コンプレックスの裏返しで、人によっては中流以上の白人より更に人種差別的だったりする。人間って弱いね。。
土壌の汚染…おそろしいよね。。
youtube でチェルノブイリのドキュメンタリー観たら、土壌の汚染は深刻じゃなく事故現場からかなり離れた土地なのに、病気の多い地帯があったそうで。分析したら、それは土質がサラサラしてて、牧草に移り易いから…って、調べて初めてわかるところがこわい。。。誰も考えつかないよね。